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新聞社に勤めていた父は、いつも日本語のことばかり話していました。新聞に日本語についてのコラム記事が出れば切り取って私にくれました。あの日本語は変だ、本当はこうなんだ、というのが口癖のようでしたが、小さい頃は特に気にしていませんでした。でも小さい私はそうやって日本語を意識するようになりました。

 

父は字もうまくて、活字のように文字を書くのが得意でした。小学校で新聞係になって、家で記事を書いていた時、見出しを思いっきり明朝体で書いてみせるのでした。本当に活字のようで驚いたのを覚えています。

 

小学生の頃は書道を習いました。正月の書き初めで日本武道館に書きに行ったこともありました。小学校の書写コンクールで金賞。ものを書くのが好きになるきっかけになったかもしれません。

 

小学校の高学年になって宝塚歌劇をよく見に行くようになります。そして毎月「歌劇」誌を買うようになりました。毎月、発売日には書店に飛んでいって買っていました。私は故・岸香織さんの「聞いて頂戴、こんな話」のコーナーが大好きで、あんな面白くて人をひきつける文章を書きたいなと思ったのを覚えています。

あの頃は舞台の原作になった小説なども読むなど、今から振り返ってもいちばん本を読んでいたかもしれません。

 

中学校の頃、家の事情で東京を離れ、茨城に引っ越しました。1学年1クラスしかない小さな女子中学に転校します。いじめられないかと心配しましたが、みんなとても温かく迎えてくれました。そこで数学の先生が、サークルのようなところで詩や小説を書かせていました。私はそこに所属していませんでしたが、クラスの子たちが小説を書いているのを見て、物を書くことっておもしろそうだなあと横から見ていました。

 

それから高校、大学と進み、成人していきますが、自分でよくノートに気持ちを書くことをしました。一人っ子でしたし、大学では1人暮らしで話し相手もいないので、とにかくよくノートとしゃべっていました。

何か嫌なことがあると気持ちが落ち着くまでずっと書きました。これはあとになっても自分を健康に保つうえで必要なツールとなり、スキルとなりました。そういえば高校の時に、脚本を書く仕事をしたいと先生に言っていたことを思い出しました。おそらくお芝居の脚本を書きたかったようでしたが、言っただけでもう忘れました。

 

だいぶたって、渡韓後、翻訳の仕事をするようになります。

2002年の日韓共催のワールドカップの前年、韓国中央日報の翻訳者募集の告知を見て応募します。その場で新聞記事を訳しますが、あとでいろいろな決まりがあることを知らされます。合格はしましたが、それからみっちり訳し方、言葉の決まり、表記の方法などを仕込まれました。そうして10年、その仕事をしました。

 

中央日報の翻訳者の中に、翌年、ソウルに新設される通訳大学院で学科長をするという方がいました。その方の要望で日本語の発音の家庭教師をしに行くことになりました。アナウンサーを目指して勉強していたことを伝授したのですが、そのまま声をかけられ、私も通訳大学院で教鞭をとることになりました。翻訳と日本語のアクセントクリニック、エッセイライティングといった科目です。韓国には韓国語を学びたくて行きましたが、日本語の学びなおし、そして極めていくということが課せられたわけです。

 

開講の頃、映像字幕翻訳に使用するソフトをつくっている会社が日本から来ると聞き、ソフトを無料体験できるということで、私は学生たちを連れていきました。無料でソフトの使い方を習得できた幸運をさらに生かそうと、そこから映像字幕翻訳の仕事を始めます。しかしスクールで習ったわけではないので、現場でたたき上げでした。それでも根気よく教えてくださったので、本当にみっちり学べました。

 

こうして映像字幕翻訳の仕事、そして日本に帰国後は映像字幕翻訳のスクールの講師を務めることになりました。おかげでもうすぐ10年目になります。映像字幕翻訳は決められた文字数に訳を入れていく作業で、文字数の制限で苦しめられるわけですが、もともと俳句や川柳の得意な日本人ですから、この仕事は日本人には合っているのではないんですね。とにかくこの仕事は楽しくて、三度の飯より大好きなほどでした。

 

映像字幕以外でも、韓流ブームのおかげで書籍を訳す機会も何度かいただきました。あまりのタイトスケジュールで、円形脱毛が3カ所できたりもしましたが、本人はいたって楽しんでやっていました。

 

コロナ禍でもこうして在宅でできる翻訳の仕事は本当に助かりました。通販会社からお声もかけていただき、ラジオ通販番組の脚本を書くなど言葉で食べさせていただけることに感謝しています。

 

私はこれからもまだまだ日本語と韓国語を駆使して生きていきたいと思っています。

ずっと物を書いたり、訳したりしてきたので、これからは話すほうもまたやっていきたいと思います。

 

 

 

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